小倉です。

最近、NSCPAの規格に関して質問される機会が増えましたので、私の考える「規格」と「法律」に関して書いてみたいと思います。

まず、規格とは。
日本にはJISがあり、アメリカはUL、カナダはCSA、その他CE認証にEN規格、ISO、ANSIやNFPAなど様々な規格があり、法律は国毎に違います。

基本的に、日本で使うロープ機材は、日本の法律とJIS規格をクリアしていなければなりません。
(EU諸国で使用する場合には、EUの法律に適合しCE認証を取得していなければなりません。)

これは私の経験から導き出された考えですが、特許にしても認証や規格に関しても、初めはどうであれ、現在では全ての特許や規格は各団体のお金儲けの手段だと思っています。

実際に、各規格を取得するためには、莫大な費用が掛かります。
規格を発行している団体と書類を作成するコンサル会社への支払いで、CE認証EN規格なら200万円を超えます。
特許に関しても、海外一ヶ国あたり、200万円前後です。

そのお金がどこに使われているのか。。。
不思議ですよね~。

各団体には各団体の都合があります。

フルハーネスを例にします。
フルハーネス特別教育が始まる前までは、厳密に言えば、CE認証を取得していても、JIS規格をクリアしていない(トルソー落下時の僅かな角度の違いによって)海外のフルハーネスは、日本での使用はNGでした。
しかし、現在では、2019年2月1日から適用された政令(墜落制止用器具の規格 第十条)により、労働基準局長が認めたものは使用可となっております。
要は、日本のフルハーネスメーカーと海外のフルハーネスメーカーとのせめぎ合いです。

ロープ高所作業に関しても、ロープ高所作業特別教育が始まる前までは、厳密に言えば日本で建設(建築)工事に対してロープ高所作業を行う事はNGでした。
しかし、二つの協会さんが政治家を動かし厚生労働省に働きかけ、ロープ高所作業が公に認められることとなりました。

これはこれでありがたい事です。
(ケンテックシステムズがNETISを取得する際に、当初、国土交通省はロープで工事を行うことに対して難色を示していました。しかし、協議の途中から国交省の態度が軟化しました。原因は、厚生労働省が、ロープ高所作業特別教育の法律を策定していることを国交省側が知ったためです。)

ただ、特別教育の内容に、ロープを使った工事、特殊伐採、消防が行うレスキュー、舞台設営など2つの協会さん以外の業務が含まれていません。
そして、ロープの教育を一日(7時間)で行う事自体に無理がありますので、今後の法律の改定が待たれるところでもあります。

では、法律や規格はどのようにして作られるか

私は、法律や資格は、「任意の団体により、任意の団体の都合の良いように作られる」ものだと思っています。

自動車レースF1でのホンダエンジン、スキージャンプの板、米国マスキー法のホンダや東洋工業(現マツダ)、数々の医療事故に関する規制、ワクチンの承認などをみれば明らかで、法律や規格を制定する団体の都合が悪ければ、「自分達の都合の良いように勝手に規格や規制を変更する。」ことが普通に行われています。

JISやCE認証やNFPAに関しても同様です。

ロープを例に取ります。

CE認証でロープの規格が作られた時代は、その時代のロープメーカーの技術で大量生産可能なロープの強度が22kNでした。

現在では、ロープメーカーの技術があがり、11.0mmでも破断強度が40kNのロープがあります。

人の手で編めば、更に破断強度の高いロープが作れます。(NHKで放映していました。)
ただし、かなりの高額になりますが。

後は、お金と安全とどちらを取るか、費用対効果です。

この世には、「超実定法的措置」及び「超法規的措置」なんて便利な言葉も存在します。

戦場で人が人を殺めることも「超実定法的措置」及び「超法規的措置」です。
成田空港で、日本国のビザを持たないのない海外の要人が逮捕されることなく、そのまま自国に帰れることも「超実定法的措置」及び「超法規的措置」です。
子供達に聞かれたときに、なんと説明(言い訳)すれば良いのか困ります。

そして、この世には、規格自体が存在しないものもあります。
パワーアッセンダーが良い例です。

世界的にみて、パワーアッセンダー自体の規格は存在しません。
海外製のパワーアッセンダーがCE認証を取得しているといっても、人を上げるためのモーターの規格です。

ケンテックシステムズでも、JISを策定している団体と交渉を行ったことがあります。
その際、JISを策定している団体(経済産業省関連の団体)の方は、当初、世界で初めてパワーアッセンダーの規格を制定することに賛成の意向を示していました。

しかし、途中で断念しました。
理由は、パワーアッセンダーの規格を制定するには、他の団体(総務省、国土交通省、厚生労働省)の意向が絡んでくるからです。

現在、5社に掛け合い、CE認証取得にも動いていますが、一切の返答がありません。

法律や規格などその程度のことです。

消防がヘリコプターとホイストで行う救助に関しても、日本の法律やJISに決まりはないと記憶しています。
規格にないものを使用しているわけですから、法律や規格は関係ありません。
あとは自分達で決めれば良いだけです。

そもそも論ですが、ロープ高所作業に使われる昇降器具の定義とは、「労働者自らの操作により上昇し、又は下降するための器具」と決められております。
よって、他人が操作する昇降器具に対して、ロープ高所作業特別教育の内容を当てはめること自体がナンセンスです。

限界を超える山岳レスキューも同様です。
私が、11mmを200m背負って3000m級の山に登るなど、それだけで自殺行為です。
よって、もし行けと言われたら、山用のシットハーネスを装着し、できるだけ細いロープと簡単な資機材のみを持って行きます。
当然、ライフラインやバックアップなどは持って行きません。

亡くなった方をロープを使って落とすこと(ある意味、死体損傷)も山岳レスキューでは普通のことだと伺っています。

バックアップデバイスも良い例です。
バックアップデバイスが100%安全かと言われると、とても安全とは言えません。

バックアップデバイス自体が自重で落ちますし、風でライフラインが弛みますし、登高時は自分の手でライフラインを張り込まなければ行けませんし。

とても、初心者向きではありません。

まだ、リトラクタ式の方が安全だと思います。
(ただし、万が一リトラクタ式が効いた際は、落下の衝撃により凄い痛みを伴いますが。。。)

 

私達が使用するロープ機材は、全て工業製品です。
工業製品である以上、大量生産されておりますので、100%安全な製品は作れません。
よって、資機材を購入した際は、使用前点検が重要になります。
特にロープの使用前点検は大切です。

私は、法律や規格をないがしろにしている分けではありません。

例えば、49年前にできた「労働安全衛生法」
日本にはこのような素晴らしい法律が多々あります。
この法律のお陰で、日本で働く方々は守られています。
私達事業者側からすればとても厳しい法律ですが、私は第三条の第1項が大好きです。

安全は自分自身で考え、自分の安全は自分で守る。

皆様、くれぐれもご安全に

それでは本日はこの辺で。