ロープ高所作業特別教育

NSCPAの規格と法律に関して(労働安全衛生法は約49年前に制定)

小倉です。

最近、NSCPAの規格に関して質問される機会が増えましたので、私の考える「規格」と「法律」に関して書いてみたいと思います。

まず、規格とは。
日本にはJISがあり、アメリカはUL、カナダはCSA、その他CE認証にEN規格、ISO、ANSIやNFPAなど様々な規格があり、法律は国毎に違います。

基本的に、日本で使うロープ機材は、日本の法律とJIS規格をクリアしていなければなりません。
(EU諸国で使用する場合には、EUの法律に適合しCE認証を取得していなければなりません。)

これは私の経験から導き出された考えですが、特許にしても認証や規格に関しても、初めはどうであれ、現在では全ての特許や規格は各団体のお金儲けの手段だと思っています。

実際に、各規格を取得するためには、莫大な費用が掛かります。
規格を発行している団体と書類を作成するコンサル会社への支払いで、CE認証EN規格なら200万円を超えます。
特許に関しても、海外一ヶ国あたり、200万円前後です。

そのお金がどこに使われているのか。。。
不思議ですよね~。

各団体には各団体の都合があります。

フルハーネスを例にします。
フルハーネス特別教育が始まる前までは、厳密に言えば、CE認証を取得していても、JIS規格をクリアしていない(トルソー落下時の僅かな角度の違いによって)海外のフルハーネスは、日本での使用はNGでした。
しかし、現在では、2019年2月1日から適用された政令(墜落制止用器具の規格 第十条)により、労働基準局長が認めたものは使用可となっております。
要は、日本のフルハーネスメーカーと海外のフルハーネスメーカーとのせめぎ合いです。

ロープ高所作業に関しても、ロープ高所作業特別教育が始まる前までは、厳密に言えば日本で建設(建築)工事に対してロープ高所作業を行う事はNGでした。
しかし、二つの協会さんが政治家を動かし厚生労働省に働きかけ、ロープ高所作業が公に認められることとなりました。

これはこれでありがたい事です。
(ケンテックシステムズがNETISを取得する際に、当初、国土交通省はロープで工事を行うことに対して難色を示していました。しかし、協議の途中から国交省の態度が軟化しました。原因は、厚生労働省が、ロープ高所作業特別教育の法律を策定していることを国交省側が知ったためです。)

ただ、特別教育の内容に、ロープを使った工事、特殊伐採、消防が行うレスキュー、舞台設営など2つの協会さん以外の業務が含まれていません。
そして、ロープの教育を一日(7時間)で行う事自体に無理がありますので、今後の法律の改定が待たれるところでもあります。

では、法律や規格はどのようにして作られるか

私は、法律や資格は、「任意の団体により、任意の団体の都合の良いように作られる」ものだと思っています。

自動車レースF1でのホンダエンジン、スキージャンプの板、米国マスキー法のホンダや東洋工業(現マツダ)、数々の医療事故に関する規制、ワクチンの承認などをみれば明らかで、法律や規格を制定する団体の都合が悪ければ、「自分達の都合の良いように勝手に規格や規制を変更する。」ことが普通に行われています。

JISやCE認証やNFPAに関しても同様です。

ロープを例に取ります。

CE認証でロープの規格が作られた時代は、その時代のロープメーカーの技術で大量生産可能なロープの強度が22kNでした。

現在では、ロープメーカーの技術があがり、11.0mmでも破断強度が40kNのロープがあります。

人の手で編めば、更に破断強度の高いロープが作れます。(NHKで放映していました。)
ただし、かなりの高額になりますが。

後は、お金と安全とどちらを取るか、費用対効果です。

この世には、「超実定法的措置」及び「超法規的措置」なんて便利な言葉も存在します。

戦場で人が人を殺めることも「超実定法的措置」及び「超法規的措置」です。
成田空港で、日本国のビザを持たないのない海外の要人が逮捕されることなく、そのまま自国に帰れることも「超実定法的措置」及び「超法規的措置」です。
子供達に聞かれたときに、なんと説明(言い訳)すれば良いのか困ります。

そして、この世には、規格自体が存在しないものもあります。
パワーアッセンダーが良い例です。

世界的にみて、パワーアッセンダー自体の規格は存在しません。
海外製のパワーアッセンダーがCE認証を取得しているといっても、人を上げるためのモーターの規格です。

ケンテックシステムズでも、JISを策定している団体と交渉を行ったことがあります。
その際、JISを策定している団体(経済産業省関連の団体)の方は、当初、世界で初めてパワーアッセンダーの規格を制定することに賛成の意向を示していました。

しかし、途中で断念しました。
理由は、パワーアッセンダーの規格を制定するには、他の団体(総務省、国土交通省、厚生労働省)の意向が絡んでくるからです。

現在、5社に掛け合い、CE認証取得にも動いていますが、一切の返答がありません。

法律や規格などその程度のことです。

消防がヘリコプターとホイストで行う救助に関しても、日本の法律やJISに決まりはないと記憶しています。
規格にないものを使用しているわけですから、法律や規格は関係ありません。
あとは自分達で決めれば良いだけです。

そもそも論ですが、ロープ高所作業に使われる昇降器具の定義とは、「労働者自らの操作により上昇し、又は下降するための器具」と決められております。
よって、他人が操作する昇降器具に対して、ロープ高所作業特別教育の内容を当てはめること自体がナンセンスです。

限界を超える山岳レスキューも同様です。
私が、11mmを200m背負って3000m級の山に登るなど、それだけで自殺行為です。
よって、もし行けと言われたら、山用のシットハーネスを装着し、できるだけ細いロープと簡単な資機材のみを持って行きます。
当然、ライフラインやバックアップなどは持って行きません。

亡くなった方をロープを使って落とすこと(ある意味、死体損傷)も山岳レスキューでは普通のことだと伺っています。

バックアップデバイスも良い例です。
バックアップデバイスが100%安全かと言われると、とても安全とは言えません。

バックアップデバイス自体が自重で落ちますし、風でライフラインが弛みますし、登高時は自分の手でライフラインを張り込まなければ行けませんし。

とても、初心者向きではありません。

まだ、リトラクタ式の方が安全だと思います。
(ただし、万が一リトラクタ式が効いた際は、落下の衝撃により凄い痛みを伴いますが。。。)

 

私達が使用するロープ機材は、全て工業製品です。
工業製品である以上、大量生産されておりますので、100%安全な製品は作れません。
よって、資機材を購入した際は、使用前点検が重要になります。
特にロープの使用前点検は大切です。

私は、法律や規格をないがしろにしている分けではありません。

例えば、49年前にできた「労働安全衛生法」
日本にはこのような素晴らしい法律が多々あります。
この法律のお陰で、日本で働く方々は守られています。
私達事業者側からすればとても厳しい法律ですが、私は第三条の第1項が大好きです。

安全は自分自身で考え、自分の安全は自分で守る。

皆様、くれぐれもご安全に

それでは本日はこの辺で。

資格というものについて(ロープ高所作業特別教育が始まり5年経過)

小倉です。

今回は、私が考える資格について書いてみます。

まず、皆さんはなんのために資格を取得するのでしょうか。

罰則があるから、自分の向上心、会社から言われて、仕事を受注するため、会社を興すため、給与を上げるため、など様々な理由があると思います。

私は資格を取得しますし発行もしますが、突き詰めて考えれば全てはお金儲けのためです。

ただ、自分のお金儲けだけの為ではありません。

私の考える資格業のゴールは「受講者が一生食っていける技術を身につける。」ことだと思っています。

NSC水銀灯講習は5日間で22万円ですが、たった22万円で一生使える技術を身につけることができれば、とても安いものだと思います。

話しは戻りますが、世の中には、様々な資格があります。
国が決めたもの、民間の団体が決めたもの、個人が決めたものなど。

国家資格から民間資格まで含めると、日本だけで何万種類もの資格が存在します。
更に、国によっても違いますので、この世には数え切れないくらいの資格が存在します。

その資格の中には、人の命を守るために制定されたものもあります。
しかし、人の命を守るためにつくられた資格でも、ほとんどの資格は、お金儲けのために使われています。

かくいう、弊会のNSC講習やロープ高所作業特別教育も同様です。

弊会も会社として、ボランティアで講習を行い、ボランティアで資格を発行することはできません。

基本的に、資格はお金儲けのために作られていますので、その内容も、完璧なものは存在しません。
完璧なものを作ってしまえば、資格の内容が厳しくなり、合格するのはわずかなごく一部の人間だけとなり、資格は広まらず、誰もその資格を必要とせず、お金儲けができなくなるからです。

建築士の試験を例に取りますと、構造計算ができなくても、試験に合格することができます。
あと施工アンカー資格にも構造計算が出てきますが、1時間の講義だけで、構造計算が理解できるはずもありません。
でも、みなさん、合格します。

資格は、資格発行者が自分達の都合のいいように(受講者にある程度の知識と経験があれば合格できるように)作られています。

私もかなりの数の資格を保有してはおりますが、資格というのはそんなもんです。

資格を提出させる側(お客様や元請)からしてみれば、資格証を持っていれば、その作業員が、実際に作業ができようができまいが関係ありません。
資格証があれば、元請側が自分達で個々の作業員の技量をチェックする必要がなく、非常に便利ですので。

ただ、職人として資格を取得することは必要です。
建築士試験なら、学科試験を合格するために何十時間も勉強し、製図試験を受かるために何十枚もの図面を書きます。

その勉強自体が、全て自分自身への投資となり、将来必ず自分に帰って来ます。
逆に言えば、自分に投資(勉強)を行わなければ、将来はありません。

建築関係の仕事に就かれているなら、是非、毎年資格試験にチャレンジして頂きたいと考えています。

ロープ高所作業の資格と安全に関しまして

ロープ高所作業特別教育が始まったことにより、国内での死亡者が増えました。
今後、もっと死亡者が増えれば、ロープ高所作業特別教育も変わっていくのだろうと思いますが、何人亡くなれば良いのでしょうか。

いつも講習で伝えておりますが、安全は自分で決めるものです。
いくら資機材がPPE(個人保護用具)でも、支点が破壊すればPPEなど何の意味もありません。

支点を構築するなら、構築する支点の勉強を行うことです。

ちなみに、ロープの本数も関係ありません。
ロープが100本あっても、ちゃんと結べていなければロープは全て解け墜落します。
逆に、全てがちゃんとしていれば、ロープが1本でも墜落しません。

ただ、私達は人間ですから、100%を求めることには無理があります。
それに、ロープを使っていれば、自然的な要因も絡んできます。

よって、私も仕事では必ずバックアップを使用しています。

結局、どのような資格を取ろうと、最後は自分です。
自分の安全は自分で勉強をして守る!!
これにつきます。

それでは本日はこの辺で。

皆様、ご安全に!!

熱中症と空調服の危険性!

ダブルチェストアッセンダー

みなさま、ご無沙汰しております。

今回は、熱中症と空調服に関して、今更ですが私の経験をお伝えしたいと思います。

現場は真夏の自動車工場内、作業内容は 水俣条約による「水銀灯からLEDへの交換工事」です。

今回、生まれて初めて熱中症対策である空調服なるものを買ってみました!

M社の2万円以上するタイプです。

購入した空調服は、フルハーネス用で半袖タイプ、空調服の背中側からモバイルフォールアレスターを取り出すことができるタイプです。

問題はフロント側のチェストアッセンダーですが、最終的なリスクを考えた際、熱中症の方が危険だと判断し、ペツル社のトルスを使用し、ダブルチェストアッセンダーで運用しました。

トルスは元々シットハーネスにチェストアッセンダーを取り付ける機材なので、登高もトラバース(水平エイドクライミング)も問題はありません。

いざ、作業開始!

ロープフッキングデバイス(特許取得中)を使い鉄骨の梁にロープを掛け、NSCPAで登高し、空調服のスイッチをON!
これで、快適な職場環境の実現ができるはずでしたが。。。。。

結果は、作業中に熱中症になりかけてしまいました。(おかしいと感じた時点で直ぐに下降しましたので、問題はありませんでしたけどね。)

熱中症になりかけた理由は、空調服の利点である、汗を乾かしてしまう機能です。
空調服を着用中、常に汗をかいていれば、気化熱の影響で体温を下げてくれます。

しかし、汗が乾いてしまえば、空調服の中へ送られてくる風の温度は、30℃以上になり、私達はフルハーネスを着用していますので、身体の場所によっては、風も送られず体温が上がって行くだけとなります。

実際に体調が悪くなったとき、空調服の中に着ていたTシャツは、完全に乾いていました。

気化熱を利用する冷却方法ですので、Tシャツが乾いていれば、その機能を発揮できません。

お陰で現場が進まず、どうすれば、私の身体に合った熱中症対策があるのか考えました。

まず、作業前に作業服自体を水で濡らすこと。
これだけで、体温がかなり下がります。

次に、水分とミネラルを、余分と思えるほどに補給すること。

Tシャツが乾いていた原因は、僕の水分補給が足りなかったことも原因です。

そして、ミネラルウォーターだけ補給しても、体内のナトリウム薄められ、水中毒となり余計に体調を崩します。

ですので、必ずミネラルも同時に補給しなくてはなりません。(今回はポカリスエットに頼りました。)

水分の取り方も工夫をして、5分タイマーを行いました。
下方の作業補助員の方に、5分ごとに声を掛けて頂き、5分ごとに水分を補給することにしました。

飲む量も、一口ではなく、できるだけ多く飲むように心がけました。

そのように工夫をした結果、今まで現場で丸1日働いていても、トイレに行くことが、ほとんどない私でしたが、今回は大量の汗をかいているにもかかわらず、午前と午後に1回ずつトイレに行くことができるようになりました。

そして、作業服も常に汗で濡れている状態となり、体温の上昇を抑えることができ、無事に全ての作業を終わらせることができました。

元々、僕ら空調屋は真夏の折板屋根の屋根裏(気温60℃以上)で、作業を行ってきましたので、暑さには強いはずだったのですが。。。

今回のことは、これからロープ工事を行っていく上で、とても貴重な経験となりました。

更に、トラバース先で事故をおこした際の救助方法も真剣に考えましたし、セルフレスキューの必要性も再認識しました。

最近、様々な熱中症対策製品が販売されていますが、くれぐれもご自分の体質に合ったものを選ぶようにして下さい。

それでは本日はこの辺で。
皆様、ご安全に!!

追伸です。

  写真は、ベンチシートのり付けに、ペツル社のオムにを使っている様子です!

支点(アンカー)について(15kN)2

小倉です。

今回は、再びアンカー(支点)に関して書いてみたいと思います。

 

「アンカーの種類」

アンカーと言いましても、沢山の種類があります。

ビルでしたら、丸環(単独では使用しません)、パラペットクランプ、設備機器(空調、衛生、電気設備機器)、あと施工アンカー、カウンターアンカー、看板の基礎や鉄骨、窓などの開口部、車、躯体そのものなど。

体育館、倉庫、鉄塔でしたら、鉄骨の柱や梁。

山林でしたら、樹木や岩。

橋梁でしたら、防護柵。

その他、高層建築物に設置されているロープを掛けるための専用の支点やレール。

車両やユニットハウスなどの移動可能な重量物。

鉄骨で自作したアンカー、アルミパイプで構築されたフレーム、単管パイプを使用したジンポールやAフレーム。

地中に打ち込んだ単管や鉄筋など。

 

「15kN」

これが問題です。

通常、ロープ高所作業(ロープアクセス)を行っていれば、装備の99%はPPE(個人保護用具)であるはずです。

しかし、アンカーに関する規格というものは、この世に存在しません。

いくら規格を通った装備をにつけていても、アンカーが破断すれば全て終わりです。

弊会では、講習時に最低破断荷重が15kN以上のアンカーを構築すると伝えています。

では、どのように15kNに耐えられるアンカーを構築するか。

と言っても、構造物に対しては、実際に破断試験を行うわけにはまいりませんので、計算上とか仮定の話になります。

もちろん、破断試験を行えるものに対しては、破断試験を行い、15kNに耐えられることを確認するのがベストです。

 

「あと施工アンカー(金属拡張系) 」

今回は、あと施工アンカーに焦点を当ててみます。

仕事が設備関係でしたら、日々、あと施工アンカーを打ち込んでいると思います。

空調関係でしたら特に、室内機を吊り込む際や室外機を設置する際にあと施工アンカーを打設します。

躯体がRC造ならもちろん、SRC造やS造でもデッキプレートを使用していればあと施工アンカーを使用します。

普段、何気なく使用しているあと施工アンカーですが、ロープ高所作業(ロープアクセス)の支点として使用する場合は、しっかりとした計算が必要になります。

通常、エアコンの室内機であれば重量は50kg未満であり、それを4本のアンカーで支えるので、1本当たり15kgも掛かりません。

しかし、ロープ高所作業(ロープアクセス)を行う場合、1つの支点に対して15kN以上の荷重に耐えられるように打設しなければなりません。

では、15kNの荷重に耐えられる あと施工アンカーとはどのようなものでしょうか。

あと施工アンカーを打設する場合、アンカー自体の破断荷重(引っ張りと剪断)はもちろん、コーン状破壊による躯体(コンクリート)の破壊を考慮しなければなりません。

アンカーメーカーの数値では、SUS製の外径12.5mm、全長40mm、使用ボルト径10mmで引張最大荷重18.4kN、剪断最大荷重26.0kNというような計算値がでております。

それは、あと施工アンカーを打ち込んだ躯体(コンクリート)が、破壊しないことを前提に算出された数値です。

実際は、上記の数値に達する前に躯体(コンクリート)が「コーン状破壊」を起こします。

例として、NSC Rescue 講習で伝えている、あと施工アンカーの引張耐力を記載します。

(へり空き効果、群効果は考慮していません。)

・アンカーボルトM12、本体打ち込み式、雌ネジタイプ、金属拡張系アンカー

・外径 da=17.3mm

・接合筋の有効断面積  bae=84.3㎟

・接合筋の規格降伏点強度  σy=235N/㎟(SS400)

・埋込長さ ℓ=50mm

・コンクリート圧縮強度 σB=21N/

・低減係数 φ1   2/3(長期),  1(短期)

                    φ2  1/3 (長期), 2/3(短期)

〈有効投影面積(Ac)の計算〉

有効埋込長さ( ℓe): ℓe= ℓ-da=50-17.3=32.7mm

有効水平投影面積(A):π・ℓe(ℓe+da)=π ✕ 32.7 ✕(32.7+17.3)=5134㎟

〈コーン状破壊により決まる場合のアンカー1本当たりの引張耐力(Ta2)の計算〉

Ta2=0.75 ✕ 0.313√ σB・Ac=0.235√ σB・Ac

Ta2=0.235√21 ✕ 5134=5529N≒5.5kN

〈設計上の許容引張力((Ta2a)の計算〉

(Ta2a=φ2 ・Ta2

長期(Ta2a=1/3 ✕ 5.5=1.8kN

短期(Ta2a=2/3 ✕ 5.5=3.7kN

以上、コーン状破壊で決まる許容引張力は短期で3.7kNとなりました。

更に、へり空き効果や群効果を考慮すれば、更に数値は低くなります。

接合筋の降伏による引張耐力(Ta1を計算すると、

Ta1σy・bae

Ta1=235 ✕ 84.3=19.8kN

設計上の許容引張力((Ta1a)を計算すると、

(Ta1a=φ1・Ta1=φ1・σy・bae

長期(Ta1a=2/3 ✕19.8=13.2kN

短期(Ta1a=2/3 ✕19.8=19.8kN

となり、鋼材が耐えられても、コーン状破壊によってあと施工アンカーが破壊されることがわかります。

上記の数値は、実際の試験結果と同じになるわけではありませんが、参考にはなります。

(NSC Rescue講習では、実際にあと施工アンカーを打設し、破壊してお見せします。)

上記の結果から、アンカーが太いほど、アンカー有効長が長いほど、コーン状破壊の耐力も大きくなることがわかります。

しかし、ペツルのハンガーを使用する場合は、ハンガーに空けられた丸穴により、あと施工アンカーの直径が決まってしまいます。

そうなると、あと施工アンカー自体の長さが重要になります。

現場で実際にアンカーを打ち込まれている方は分かると思いますが、コンクリートの強度(特に表面)が、実際の強度に足りていない事など日常茶飯事です。

それを考えれば、計算ではじき出された許容引張力 7.5kN以上のアンカーを、最低3本(1本は予備)は打設する必要があると考えます。

あとは、各自で計算を行い、許容引張力 7.5kN以上のあと施工アンカーを選定して下さい。

 

「ファンスの基礎」

先日、仲間の職人さんに、フェンスの基礎について聞かれました。

「フェンスの基礎は15kNに耐えられるのか」と。

実際に引張試験を行っているわけではありませんので100%ではありませんが、答えは15kNには耐えられないです。

以下、私が15kNに耐えられないと考える理由を書きます。

まず、ビルを建てている中で、フェンスが設置されると言うことは。RC造であれSRC造であれS造であれ、陸屋根であり屋上があります。

屋上自体は、コンクリートでできたもの、ALCを敷き詰めたもの、デッキにコンクリートを打設したものなどがあります。

そして、防水工事を行い、その防水層を守る為に軽量コンクリートを流し込みます。

フェンスを設置する場合は、通常であれば屋上の防水工事が終了してから、フェンスの基礎となるコンクリートの升を並べます。

そして、防水層を守る軽量コンクリートを屋上に流し込み、升を固定します。

軽量コンクリートの養生期間が終わると、升にコンクリートを流し込みフェンスの支柱を固定し、フェンスを取り付けます。

よって、フェンスの基礎は、躯体に固定されているわけではありません。

軽量コンクリートで升の周りを固められているだけです。

上記の工程から、私には、フェンスの基礎がとても15kNに耐えられるとは思いません。

講習でいつもお伝えしていますが、アンカーを構築するなら、まずは重量物が一番です。

重ければ重いほどアンカーとして適しています。

アンカー選定の際、物体を大きなものとしてとらえ、できるだけ大きく重いものを選定して下さい。

「動荷重試験」

最後に、アンカーを構築した際、必ず行わなくてはならないことがあります。

それは動荷重試験です。

私がフルハーネスなどの標準装備を装着すると、重量が85kgになります。

その私が全体重を掛け、どんなに力を込めて動荷重試験を行っても、アンカーには1.7kNしか掛かりません。

もし、1.7kNで破壊するものにぶら下がれば、アンカーが破壊し墜落します。

講習時にいつもお伝えしていますが、動荷重試験はアンカーを壊すつもりで行って下さい。

もし、動荷重試験でアンカーが破壊すれば、それはラッキーです。

考えてもみて下さい。

もし、1.7kNで破壊するようなアンカーにぶら下がったらどうなるか。

アンカーの破壊だけはなんとしても避けなくてはなりません。

それでは本日はこの辺で。

皆様、ご安全に!! 

セルフレスキューの必要性

セルフレスキューの必要性(たった3分…)

小倉です。

今回は、セルフレスキューの必要性について書いてみたいと思います。

フルハーネスの危険性

私たちは、基本的にフルハーネスを着用しています。

フルハーネスを着用しONロープ状態で身体の力を抜くとどうなるか。

ロープ高所作業特別教育やNSC講習では、いつも受講生の皆様に試して頂いておりますが、大体の方は、頭がお腹よりも下がり、頭に血が上り呼吸が苦しくなってきます。

更に続けると、手足がしびれてきて。。。と、さすがにそこまでやったことはありません。

下手すると本当に死んでしまいますので。。。

一般的に、ロープ高所作業(ロープアクセス)中に意識を失えば、人は3分から15分で死亡すると言われています。

そして、たとえ意識を失わなくとも、ONロープ状態が続けば、人は15分から30分で死亡するとも言われています。

そのように短時間で死亡する原因は、フルハーネスを着用していることによる四肢の圧迫です。

2つの症候

圧迫による症状により、2つの症候に分けられます。(以下、お医者さんや消防士さんの受け売りです。)

1. エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)

  ONロープの状態で意識を失い身体の動きが止まれば、フルハーネスのレッグループで締め付けられている足の血液の循環が悪くなります。

そうすると、血液は濃くなって固まりやすくなり、この状態が続くと、脚(主にふくらはぎ)の静脈内に血の塊(血栓)ができます。

これを、深部静脈血栓症と呼び、静脈内にできた血栓はしだいに大きくなり静脈から剥がれ、血流にのり肺動脈や肺に流れます。

この血栓が肺動脈をふさぐことを塞栓(そくせん)といい、この状態を急性肺血栓塞栓症と呼びます。

小さな血栓が肺動脈につまった場合は、肺へ流れる血流が低下し、肺でのガス交換が不十分となるため、息切れ、胸や背中の痛みが生じます。

しかし、大きな血栓がつまった場合には、肺へ流れる血液が著しく低下し、肺でのガス交換ができなくなるだけでなく、血圧が低下し死亡すると言われています。

2. クラッシュ症候群(挫滅症候群)

ONロープの状態で意識を失い身体の動きが止まれば、フルハーネスにより四肢の筋肉が圧迫されます。

そして、筋肉が圧迫されると、筋肉細胞が障害・壊死を起こし、それに伴いミオグロビン(たん白質)やカリウムといった物質が血中に混じり毒性の高い物質が四肢に蓄積されます。

その後、救助などで圧迫されていた四肢が解放されると、血流を通じて毒素が急激に全身へ広がり、心臓や腎臓の機能を悪化させて死亡すると言われています。

更に怖いのは、例えその場で一命をとりとめたとしても、腎臓にもダメージを受け、その後に腎不全で死亡する可能性があるそうです。

もし、クラッシュ症候群が疑われる場合は、ドクターヘリを読んで、その場で輸液を行ってもらって下さい。

心停止

事故や病気による心停止に関して。

僕が聞いているのは、心臓が心室細動の時は、まだ心臓内の筋肉に酸素が残っている状態である。その心臓内に残った酸素は約3分で無くり、その後、酸素が送られなければ、もう二度と心臓は動き出さない。と。。。

たった3分です!!

AEDを使えるのは心室細動の時だけです。止まった心臓に対しては、AEDは働きません。

仲間(要救助者)が事故を起こしたばかりなら、とにかく上げるか下ろすかして、心臓マッサージと人工呼吸を行うことが重要です。

現場にAEDがあれば言うことはありません。

セルフレスキュー

何はともあれ、事故(病気も含む)があれば、まず119(消防)へ連絡をします。

できれば、救助者とは別の人間が119(消防)へ連絡することが望ましいです。

救助者は、事故を起こした仲間(要救助者)を迅速に上げるか下げるかしなくてはなりません。

(フルハーネスに長時間ぶら下がっていた場合は、上げた場合はONロープ状態を維持する、下げた場合は下げきらないことも重要になります。)

ただ、場所にもよりますが、実際に300mの高所で作業を行っていて、どのくらいの時間で下ろすことが可能でしょうか。

最初からレスキューシステムが組んであれば、下ろすだけなら3分(約、秒速1.6mちょい)で下ろせるかもしれません。

ただ、上げるとなると人力では不可能です。

弊社の場合は、現場に必ずNSCパワーアッセンダーがありますので、分速15mとして約20分で上げられます。

(分速15mは、充電ドライバーが2000回転としてです。充電ドライバーが4000回転なら分速30mで上げられます。)

が、3分には間に合いそうにありません。齊藤君、ごめん。。。

 

あ、齊藤君はまだ生きてました!!

事故時はもちろん、ただの熱中症でも上記のような症候群が考えられるため、できるだけ迅速に消防が来られる場所まで仲間(要救助者)を移動させることが重要です。

その仲間(要救助者)を移動させる技術をセルフレスキューと呼びます。

フルハーネスを着用している以上、救助に掛けられる時間は限られています。

ロープ高所作業(ロープアクセス)を行う以上、自分達の命は自分達で守ると言うことを肝に銘じ、必ずセルフレスキューを学んで下さい。

セルフレスキュー後

消防士さん達に仲間(要救助者)を引き渡すのはもちろんですが、そこまでの経緯を細かく伝えて下さい。

特に、事故後のフルハーネスでぶら下がっていた時間をできるだけ正確に伝えて下さい。

 

それでは本日はこの辺で。

皆様、ご安全に!!

NSC Novice 講習(3日間)

小倉です。  

先日、NSC Novice 講習を行いました。

今回の受講生は、ケンテックのお客様で、協会のロープ高所作業特別教育を受講された方です。

NSC講習は、受講生2名に対し、私とアシスタントに齊藤が付き、マンツーマンで講習を行います。

弊会の講習は、基本的に職人に対して行いますので、とても厳しく講習の途中で脱落する方もいらっしゃいます。

初日(8時から18時まで。)

まず教室で、ロープ高所作業特別教育のおさらい、ノット15種類、NSCの説明、ロープアクセス技術の説明、フォールアレスト6kNとシステム15kNの説明など。

そして最も大切なアンカーの説明と構築方法を伝えます。

(毎度のことですが、アンカーは自分で決めるしかなく、アンカーを決めるためには、アンカーを知らなければなりません。

アンカーを知るためには、自分が使うであろうアンカーの勉強をすること、そして実際に経験する事が大切です。)

午後からは、屋上の鉄骨を利用して水平にロープを張り、登下降の組み替えを100回、身体で覚えるまで繰り返してもらいます。

(初心者が垂直ロープで登下降の練習を100回行うと、それだけで身体が壊れますので、まずは水平に張られたロープを使用します。)

そして、頭で考えずに組み替えができるようになってから、やっと垂直ロープに触れます。

垂直ロープでも、また同じように組み替えの練習です。(組み替えはチェック、チェックです。)

初日の最後は、登高器での下降、下降器での登高、ロープから別のロープへの移動、ロープの途中にノットを結びそれをクリアしながらの登下降を練習して終了となります。

受講生の方は、ホテルへ帰ったあとも、ひたすらイメージトレーニングとノットの練習…のはずです。

 

 

 

 

 

 

二日目(8時から20時まで。)

午前中は初日のおさらいから始まり、ロープガードの通過、エッジを乗り越え登下降、リビレイ、ディビエーションの説明を行い、各自、できるまでひたすら練習します。

午後、15時の休憩後はNovice用セルフレスキューを教えます。

要救助者がONロープで熱中症になったと想定し、救助者が別のロープセットを使い要救助者を伴って下降する方法です。

そこで、NSCパワーアッセンダーの実演も行います。

既に、登高や人を引き上げる大変さを知って頂いているので、NSCパワーアッセンダーの能力にお二人とも納得!!

それが18時すぎまで、そこから20時までその場で懇親会です!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日目(8時から17時まで。)

朝一でノット15種類のテストを行います。

できなければ先へは進めませんので、皆さんちゃんと覚えてきます。

(ノットに関しては、講習前にテストを行う15種類をメールで伝えていますので、お二人とも完璧です!!)

そして、ロープアクセス技術のテストです。

(当たり前ですが、これに合格しないと、ビルの外壁へは出られません。)

1点だけマイナスがありましたが、お二人とも難なくテストに合格!

ここから、アンカーの構築に入ります。

弊会では、アンカーに巻き付けるスリングは建築用のスリングベルトを使用します。

建築用スリングベルトの破断荷重は100kN近いですし、幅が広いため建物を痛めず養生も少なくてすみます。

降下面とアンカーラインの角度、アンカーポイントの設定、水平面でのディビエーションやYビレイの方法などを伝え、自分達でアンカーを構築してもらいます。

それができれば、実際のビル外壁での登下降です。

まず、斜壁。これが怖い。

ここで登下降ができれば、30mくらいの壁は怖くなくなります。

 

 

 

 

 

 

 

あとは、自分達で降りたい壁を選んで頂き、ひたすらアンカーを構築しビルの外壁を登下降してもらいます。

17時、片付けを行い全ての講習が修了となります。

純ちゃん、松っちゃん、3日間お疲れ様でした。

次回、NSC Rescue講習に来て頂けるのを楽しみに待ってます!!

それでは本日はこの辺で。

皆様、ご安全に!!

ロープカット レスキュー訓練(20名参加)

小倉です。

先日、協力業者の職人さん達20人に集まって頂き、ロープカットレスキュー訓練を行いました。

切ったロープの合計は100m、全てゴミとなりました…

今回行ったレスキュー方法は三つ。

一つは、要救助者を自分のシステムに移し、要救助者のロープをカットする方法。

この方法では、要救助者と救助者が一緒に下降します。

二つ目は、要救助者のメインロープに別に組んだシステムのロープを接続し、要救助者のロープをカットする方法。

この方法は、要救助者のみを下降させます。

三つ目は、人力で要救助車を引き上げる方法。

この方法は、救助者の自重を利用して要救助者を引き上げます。(カウンター)

それと、大切なのは、必ず仕事で使うナイフとは別の、ロープをカットするためだけのナイフを携行することです。

 

一つ目の方法は写真のように要救助者のメインロープをカットします。

要救助者まで下りたら、状態を確認しカラビナチェーンを使って2点確保、この時、ディッセンダーのカラビナの向きが重要です。

真剣にやっているつもりですが、皆さん楽しいらしく顔が緩んでいます。

 

カット後は、自分のディッセンダーをコントロールして安全な作業床若しくはGLまで下ろします。

が、下ろしきってはいけません。

要救助者のお尻の下に20cmの空間を設けます。

それにより、要救助者を動かすこともストレッチャーを入れる事も出来ます。

更に、血栓や挫滅症候群の危険が疑われる場合にも有効です。

この、隙間を空けるという方法は、IRATAの藤原先生から教わりました。

あとは、要救助者の状態を見ながら消防の方に引き渡します。

これは消防士さんに教わったのですが、挫滅症候群が疑われる場合、ドクターヘリを呼びドクターに輸液を投与して頂くしか助ける方法はないそうです。

電話も通じない、ドクターヘリも来られない場所だったら…その部分を失うつもりで縛る。

万が一の時はやるしかないんでしょうね。

二つ目の方法は写真のように要救助者のメインロープをカットします。

ONロープではAEDも使えませんので、できる限り早く下ろさなくてはなりません。

緊急時に要救助者を下ろす最も早い方法です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は、エッジ際にあるディッセンダーをコントロールして、安全な作業床若しくはGLまで要救助者を下ろします。

三つ目の方法はカウンターといい、要救助者の張られたメインロープに弛みを付け、そこに自重を乗せていき要救助者を引きあげます。

皆さん、とても頑張って自分より体重のある要救助者を引き上げていました。

一日、お疲れ様でした。

最後に、NSCパワーアッセンダーがあれば、どんなところでも簡単に高速で要救助者を引き上げる事ができます。

それが、NETIS登録ノン・スキャフォールディング工法の安全性であり信頼性でもあります。

それでは本日はこの辺で。

皆様、ご安全に!!

安全で便利なロープ高所作業用品の紹介です!(ランヤード)

小倉です。

今日は安全で便利な機材の紹介をしたいと思います。

機材の名前は、ペツル社の「プログレスアジャスト」です。

この機材を一言で説明すると、長さの調整ができるランヤードです。

これが発売される前は、ダイナミックロープとスペルジカ(ペツル社製)で確保をしていましたが、プログレスアジャストができたことで、高所作業が安全で楽になりました。

例をあげると、プログレスアジャストは長さが調整できるので、ビレイ時の落下係数を抑えることができます。

そして、平面でストレッチャーを運ぶ場合や、セルフレスキュー時のカウンターを当てる際も、自分の体にランヤードの長さを合わせることができるので楽になりました。

更に、アンカーを壁面に打ち込みながらトラバースを行って行く際も、プログレスアジャストの末端を引けば引いた方に寄っていくのでトラバースが簡単になり、プログレスアジャスト4本をストレッチャーに取り付ければ、ストレッチャーの角度調整が容易にできるようになりました。

特に、ONロープ状態の要救助者の荷重を抜きたい場合、自分の体重を使いカウンターを掛けるのですが、昔はスペルジカとカラビナでカウンターを掛けていたので、要救助者が自分より重いととてつもなく大変でした。

でも、プログレスアジャストの登場で、簡単にカウンターが掛けられるようになりました。

 

基本的なことですが、2点確保を行うために、最低3本のランヤードが必要です。

弊会では、プログレスアジャスト2セット(ランヤード4本)をメインアタッチメントに取り付け、そのうちの長さの調整ができない1本を「直」にハンドル付きアッセンダーに取り付けることを推奨しています。

最後に、ランヤードのカラビナには必ずキャプティブを取り付けること、そのカラビナはサイドのアタッチメントではなく、必ずギアループに掛けること、以上2点は業界のルールですので必ず守ってください。

写真には、ジャグとジャグトラクション(4:1 のメカニカルアドバンテージシステムを構成するためのダブルプーリー)が写っていますが、この便利な機材に関してはまた後日!!

それでは本日はこの辺で。

皆様、ご安全に!!