小倉です。

支点に関して、いつもロープ高所作業特別教育やNSC講習で伝えていることを、ブログを読んで頂いている方にお伝えしようと思います。

まず、機材から!

機材は基本的にPPE(個人保護用具)でなければなりません。

PPEである以上、全ての機材は規格があり、使用する荷重が決まっています。

(ただし、弊社でも開発し販売している《パワーアッセンダー》というカテゴリーは、現在のところ世界的にPPEの規格がありません。そこで、JIS(日本工業規格)に働きかけパワーアッセンダー用の規格を世界で初めて制定しようと頑張ってみましたが、省庁間の問題で断念しました。)

しかし、最も大切な『支点』(アンカー)に関する規格は、世界中のどこを見ても、どんな文献を探しても、これを支点にしなさいとは記載してはありません。

ですから、支点は自分自身で決めるしかありません。

では、どうやって支点を決めればいいのか。

丸環がついているから丸環を使う、太い樹木があるからその樹木を使う、丈夫そうな設備機器(キュービクルや室外機)があるから設備機器を使う、梯子があるから梯子を使う、単管があるから単管を使う、車があるから車を使う、建物にウェビングやロープが掛かる場所があるから、そこを使う、あと施工アンカーが打ち込んであるからそのアンカーを使う…切りがないですが、その支点は万が一の衝撃荷重に耐えられますか?

支点を作成すると言うことは、支点の強度を知らなければなりません。

では、どうするか。

方法は二つあります。

自分が支点にするものの耐荷重を実際にテストする、若しくは支点にするものの勉強をする、かです。

例えば、丸環を例にあげれば、水平方向の引張荷重や上向きの引張荷重を実際にテストすることはできますが、15kN以上を掛けたテストに使ったその丸環は今後使用できなくなります。

それは、現実的ではありませんね。

話しは変わりますが、動荷重試験は、思い切り、丸環を壊すつもりで行って頂いて構いません。

どんなに思い切り蹴飛ばしても1.7kNしか掛かりませんから。

もし、それで丸環が壊れたらラッキーです。

オーナーに、「動荷重試験を行ったら丸環が壊れました。もし、この丸環にぶら下がっていたら私は死亡していました。試験で壊れてラッキーでした。」と報告して下さい。

話しを戻します。

残された方法は… 支点の勉強をすることです。

丸環を使うなら(できる限り丸環は使わないで下さい。)丸環の勉強、樹木を使うなら樹木の勉強、構造物を使うなら構造物の勉強をする。

それが自分や仲間の命を守ります。

キュービクルってわかりますでしょうか?

箱形で屋根にアイボルトが4つ付いています。

あのアイボルト、キュービクルを吊るための物ではありません。

キュービクルの中には、受電するための設備が納められていて、トランス1台だけで300~400kgあります。

それが、何台も入っているのに、アイボルト4本だけで吊ることができるはずがありません。

あのアイボルトは、受電設備を入れ替えるとき、キュービクルの蓋を外すために設けられています。

当然、耐荷重は数十キロです。

よく、キュービクルのアイボルトを支点にすると耳にしますが、絶対にやめて下さい。

(キュービクル自体が錆で腐食していなければ、養生をして、スリングやウェビングでキュービクルを囲ってしまえば問題ありません。)

エアコンの室外機にしても同様です。

室外機に圧縮機(鉄の塊)が入っていれば重量がありますので支点に利用できる場合もあります。

しかし、室内圧縮機と言って室外機に圧縮機の入っていない軽い物があり、支点として利用できない室外機があります。

樹木も同じように支点として使用できない物があります。

昆虫や鳥などに穴を開けられている樹木、成長する過程で大きな衝撃荷重を受けている樹木、ツルやツタが巻き付いて死んでいる若しくは死にかけている樹木、キノコが生えている樹木、など見た目は太くても支点として使用できない樹木が多々あります。

(反対に、直径10cmしかない樹木でも引っこ抜くのに、ユンボが必要な事も事実です。)

車も同じです。

通常、ホイールをハブに留めているボルトはM12以上あります。

M12以上あれば、1本当たり剪断の許容応力度が7kN以上、引っ張りで6kN以上あります。

しかし、それはちゃんと整備されていた場合の数値です。

私は10代の頃、ガソリンスタンドでバイトをしていましたが、エア式のインパクトレンチを使い、同僚がハブから出ているボルトをねじ切るのを何度も見ました。

もちろん、その車は整備工場へ運ばれ修理をしてましたけど…

梯子も同じです。

僕らも梯子を使用して室外機の搬入出を行います。

その時は、ステップを専用の金具で養生してからウェビングを掛け、ステップの一ヶ所に荷重が掛からないようにします。

(専用の金具が販売されています。)

もし、ステップを養生せずに100kgの室外機の搬入出を行ったらどうなるか…

ステップのセンター2cm幅に倍の2.0kN弱の荷重が掛かりますので、ステップは真ん中を軸にして折れ曲がる方向へ変形します。

すると、両端のステップのカシメがサイドバーから抜けてきて、最終的にステップがサイドバーから外れます。

すると、ウェビングに掛かった荷重は荷重を増しながら次のステップに掛かり、荷重が小さくなるまで次々にステップを破壊していきます。

建物も同じで、木造、軽量鉄骨、RC造、SRC造、S造など基本的な構造が違います。

支点にできるのは基本的に梁や柱であり、開口部であっても、柱の入っていない開口部もあります。

もう一度言います。

支点は自分で決めるしかありません。

使用する支点の勉強をする事、できるだけ重量物を選定する事、大きな「物」としてとらえる事、15kN以上に耐えられると確信のもてるものを選定する事!

自分の命は自分で守るしかありません。

それでは本日はこの辺で。

皆様、ご安全に!!