小倉です。
今回は、屋上などへの資材引き上げ時に使用する、単管で作成するAフレームやジンポール(以下、フレーム)の角度と荷重に関して書いてみます。
考え方の前提として、フレームの先端からアンカーへロープを張り込み、フレームの先端にNSCパワーアッセンダーを取り付け、資材を引き上げるという設定です。
もし、NSCパワーアッセンダーの代わりにプーリーを取り付け、つるべで資材を引き上げれば、全ての荷重は2倍以上になります。
まず、地面に対するフレームの角度から。
私達、建築関係の人間は、防水膜の大切さをよく知っています。
万が一、防水膜を傷つけたなら、傷つけた防水膜の補修を行うことができる専門の防水屋さんを呼んで補修を行わなくてはなりません。
お金も掛かりますし、お客様には怒られますし、とても面倒です。
その為、フレームを使う際に、防水膜を傷つけないことが前提となります。
そうなると、フレームの角度は、地面に対して立っていれば立っている(90度)ほど良いと言うことになります。
ただ、地盤面に対してフレームの角度が90度ではフレームが倒れますし、使いにくいのである程度の角度が必要となります。
私達は梯子を使いますが、梯子の角度は75度と決められています。
この角度が、長年の経験による安全とコストを考えた最も最適な角度だと認識しています。
(梯子の足が滑りにくい、梯子が軽く作れる、梯子が人の荷重に耐えられる、梯子が登りやすい、梯子が安く製作できるなど。)
更に、フロントタイが取れる現場なら、当然フロントタイを取ればフレームは安定します。
フレームを組む際も、防水膜を傷つけないために、この角度を参考にします。
建物の屋上では、アンカーは決まっており、どこからでもアンカーを取れるわけではありませんので、アンカー側が破断しないように、フレームとアンカーの角度には細心の注意が必要です。
わかりやすいようにフレームの角度からアンカー角度(位置)を計算してみます。
まず、フレームを地面に対して75度で組むとします。
次に、フレームを保持するアンカーとフレームの角度です。
フレームを75度で立てるなら、90-75=15で、資材引き上げロープ(ロープA)とフレームの角度は15度となります。
基本的に、吊り荷の荷重よりアンカーに掛かる荷重を増やしたくありませんので、フレームと引き上げロープ(ロープB)の角度は、ロープAとフレームの角度15度以上となります。
上記の角度は、ロープAに対して30度の開き、地盤面に対して60度の角度となります。
その角度から外側にアンカーがあれば、問題ありません。
吊り荷の荷重が100%として、上記15度でアンカーには100%が掛かり、フレームには約193%が掛かります。
次に、フレームと地面の角度を45度としてみましょう。
90-45=45 フレームとロープBの角度は45度、すなわち、フレームトップから、真横にロープBを引っ張れば、ロープBとアンカーに100%となります。
この場合、地盤面に対して水平にアンカーを構築しなければならないため、地盤面にあるアンカーは使用できません。
そして、フレームの転倒や防水膜の損傷が問題となります。
この場合、フレームBを増やす事により、アンカーを地面から取りフレームAの転倒を防ぐことができるようになります。
ただし、フレームBとロープCとアンカーに掛かる荷重が約3.8倍になりますので、この角度では実用的ではありません。更に真上に荷重をかけられるアンカーも多くはありません。(ただし、フレームの角度を変えることにより、アンカーとフレームに掛かる荷重を減らすことはできます。)
次にフレームと地面の角度を30度としてみましょう、
90-30=60 フレームとロープBの角度は60度、フレームは元々30度で立っていますので、垂線に対して120度以上でアンカーを構築しなければなりません。
もし、フレームとアンカーの角度を狭めればどうなるか。
フレームとアンカーには莫大な荷重が掛かります。
例として、75度でフレームを立て、フレームとアンカーの角度を15度から10度に狭めた場合。
フレームには243%、アンカーには149%の荷重が掛かります。
たった5度の違いで、50%増しの荷重が掛かります。
次の例として、フレームを45度で立て、アンカーを地盤面から取ろうとして、フレームとアンカーの角度を15度とした場合。
フレームには334%、アンカーには273%の荷重が掛かります。
更に、地面に対してフレームを10度、フレームとロープBを10度(ロープAに対して90度)で設定すれば、フレームに587%、ロープBとアンカーに579%が掛かります。
引き上げる物が100kgであれば、ロープBとフレームに約5.8kN(580kgf)、更にパワーアッセンダーの代わりにプーリーを取り付けてつるべで引き上げれば、ロープBとアンカーに約12kN「1.2tf)の荷重が掛かる計算になります。
私達、設備屋は、エアコンの室外機(最大200kgくらい)を吊り上げます。
くれぐれも、システムが破断しないように、フレームとアンカーの角度にはお気を付け下さい。
それでは、本日はこの辺で。
皆様、ご安全に!!